What’s Going On / Marvin Gaye

言わずと知れたソウルミュージックの金字塔にして、マーヴィン・ゲイの代表作である「What’s Going On」。米ローリング・ストーン誌が選ぶ「オールタイム・ベストアルバム500」においても、第6位にランクされている歴史的名盤です。

もはや説明不要の傑作であるわけですが、何度聴いてもその奥深さに酔いしれることができる一枚です。「普遍性」という言葉がこれほど当てはまる作品もそうはないでしょう。アルバム全体を通して、とにかく音作りが繊細で、一切の無駄がない。そして、何と言っても、この作品の存在価値を現在のものにしている理由は、そのテーマ性でしょう。俗に言う「コンセプトアルバム」の走りとなっている今作ですが、音楽もさることながら、戦争や自然破壊、ドラッグ、貧困や人種差別、非人道的行為といった、当時ではタブーともいえる諸問題を取り上げ、音楽という芸術表現に詰め込んだマーヴィンの勇気ある行動は、当時の人々を含め、現在の私たちの心をも突き動かす魅力と圧倒的なパワーに満ちています。

What’s Going On

SIDE A
01. What’s Going on
02. What’s Happening Brother
03. Flyin’ High (In the Friendly Sky)
04. Save the Children
05. God is Love
06. Mercy Mercy Me (The Ecology)

SIDE B
07. Right on
08. Wholy Holy
09. Inner City Blues (Make Me Wanna Holler)

レコードのA面はもはや「神の領域」といっても過言ではない作品に仕上がっています。各曲は繋がっていて、一つのテーマを軸に展開します。世界に対する「秩序不安」をテーマとした「What’s Going On」に始まり、ベトナム戦争から帰還した弟から受けたインスピレーションから生まれた「What’s Happening Brother」、愛を乞う「Save The Children」「God is Love」と続き、神への救いを求める「Mercy Mercy Me (The Ecology)」へと続きます。

流れを通して美しい旋律で統一されていますが、個人的に印象的なのが、「Mercy Mercy Me (The Ecology)」の最後。微妙に音が歪んで消え入るように終わる部分は、夢から現実に引き戻された瞬間のような、何ともやるせない気分にさせます。真意はわかりませんが、マーヴィンが当時感じていた世の中に対する理想と現実のギャップが、この曲の最後に表れているのではないかなと思っています。妙にリアルさを感じてしまう音作りです。

レコードジャケットも秀逸です。「What’s Going On」のジャケットはマーヴィン・ゲイが空を見上げる顔が印象的で、誰もが一度は見たことがある写真ではないかと思います。この表情もですが、どこか理想と現実の狭間で揺れ動く彼の心情が透けて見えるようなショットです。既にプライベートでも問題が山積みだったこともあり、どこか不安げな雰囲気を漂わせます。

What’s Going On

それでも、この作品を作り上げた瞬間のマーヴィンは、誰も見たことがない雲の上の世界を体感していたのだと思います。生み出した背景にあるものが悲しい現実であったことが、より一層彼を苦しめていくことになるわけですが。

同時代を生きたダニー・ハサウェイもそうですが、理想と現実のギャップというものが、当時の黒人ミュージシャンを大いに苦しめることになります。ここでは説明は省きますが、そのギャップが、マーヴィン・ゲイやダニー・ハサウェイら「ニューソウル」と呼ばれた天才たちの「光と影」となり、当時の音楽シーンを席巻していくことになります。

What's Going On
What’s Going On

暗い話ではありますが、それは置いておいたとしても、いつ聞いても素晴らしいと思わせてくれる作品です。部屋がオシャレに感じる!

What's Going On
What’s Going On

ちなみに、私のお気に入りのバージョンは音楽で世界をつなげるプロジェクト Playing for Change による「What’s Going On」。イントロから別世界に連れて行ってくれる感じ。

世界に平和を!

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください